【艦これSS】野分「それでも罪には変わりません。罰則はどうしましょう?」浜風「はあ…後で説教ですね」

1 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:00:06.89 ID:iboNTy2Wo
陽炎から秋雲まで。

陽炎型姉妹実装14人分。
2 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:04:05.43 ID:iboNTy2Wo

【 陽炎 】
『 メロンパンの中にメロンは入っていない 』

おやつを頬張る雪風に、真実を告げられないままでいる。
『 メロンソーダの中にメロンは入っていない 』

笑顔でガッツポーズの時津風に、未だ言えないままでいる。
駄目なお姉ちゃんを、許してほしい。
陽炎はまだまだ未熟です。

黒潮「陽炎」

不知火「陽炎」

陽炎「無理無理無理!絶対無理!」

黒潮「だって言わんと」

不知火「恥をかくのは雪風達です」

陽炎「だから無理って!サンタの時だって、大変な騒ぎになったじゃない!」

黒潮「あー…」トオイメ

不知火「あー…」トオイメ

陽炎「もうちょっと大きくなったら、絶対言うから!ね!ね!」

3 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:06:20.35 ID:iboNTy2Wo

【 不知火 】
プリキュアに選ばれた時の為に、名前を色々と考えている。
沈着冷静。いつだって準備は怠らない。
◇◇◇
春雨と決闘する事になった。

勝った方がキュアピンク襲名。
春雨が負けたらキュアマーボー、不知火が負けたらキュアオチドに、それぞれ名称変更。
負けられない戦いがここにある。

不知火「」シクシク

春雨「」メソメソ

黒潮「どないしたん、あの二人?」

浜風「途中から漣が飛んできたらしくて」

陽炎「あー初期艦…」

初風「そりゃ練度が違うもの」

4 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:07:29.45 ID:iboNTy2Wo

漣「キュアピンクですが、何か?」キタコレ!

吹雪「キュアスノーです!」フンス

五月雨「あの、キュアブルーです」テレ

電「きゅ、キュアサンダーなのです」オズオズ

叢雲「…キュアクラウド」ゲンナリ

磯風「キュアツンデレじゃないのか」

五月雨「それは曙ちゃんが」

浦風「そうなん?」

漣「負けちゃうと、キュアクソテイトクになるんで。さすがに」

谷風「なるほどー」

叢雲「もう帰っていいかしら」グッタリ
5 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:08:51.87 ID:iboNTy2Wo

【 黒潮 】
今日は恒例のたこパの日。みんなでたこ焼きパーティーや。
よーさんあるから、みんなじゃんじゃん食べような。

秋雲「あ゛ぁ゛~、やっぱこれ最高よねー」

舞風「あたしエビ入りが好きー!」

野分「たくさんあるから、慌てなくても大丈夫ですよ」

谷風「そういや、そろそろ夏祭りだなあ」

浜風「楽しみです」

磯風「今年は有名人が来るらしいぞ」

浦風「マジか!誰やろ、楽しみじゃのぉ」

時津風「屋台もたくさん出るんだよ!」

天津風「年々大規模になっていくわね」

雪風「雪風は!とうもろこしを、食べるのですっ!」

初風「はあ…子供なんだから」

黒潮「うーん、ウチはやっぱりたこ焼きかなあ」

不知火「黒潮、どれだけ好きなんですか」

陽炎「まあ、黒潮らしいけどね」

ベタ、と言われるかもしれんけど。
うん。ウチはやっぱり、たこ焼きが一番好きや。

お店でも買うし、自分でも作る。鳳翔さんに無理言って、作ってもらった事もある。
でも屋台で食べるたこ焼きが、多分世界で一番美味しい。

理由なんて決まってる。
特別な場所と、特別な時間。やっぱりあれは、特別な味なんや。

6 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:10:09.36 ID:iboNTy2Wo

【 初風 】
提督に渡せなかったバレンタインのチョコを、机の奥底にしまい込む(二年連続、二回目)
冬が終わり夏が来ても、初風の春はまだ遠い。

陽炎「ちょっと初風!あんたの机、凄い事になってるわよ?」

不知火「蟻だらけです」

黒潮「大惨事やなー」

初風「」

陽炎「何なの?ジュースでもこぼしたの」

不知火「去年も確か、この時期に」

黒潮「風物詩やなー」

初風「私、片付けるから!あっち行って!」

雪風「甘い匂いがするのです」ヒョコッ

時津風「チョコレートだよ、チョコレート!」ピョンピョン

初風「あっち行ってて!」ムキーッ!

来年こそは。来年こそは。
初風は遠い真冬の明日を想い、夏に熱く誓うのでした。

7 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:11:21.00 ID:iboNTy2Wo

【 雪風 】
鳳翔のめんつゆトラップが炸裂し、雪風涙の途中退場(三年連続五回目、今シーズン初)
時津風「雪風はお馬鹿さんだね」ヤレヤレ

時津風「シールの貼ってある方が、麦茶だよ」ゴクゴク

時津風「」バタン
時津風被弾により途中退場(三年連続五回目、今シーズン初)
陽炎「今年もそんな季節なのねー」

不知火「去年も確か、この時期に」

黒潮「風物詩やなー」

8 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:13:45.64 ID:iboNTy2Wo

【 天津風 】
どうかあのひとを奪らないで。
あのひとを好きにならないで。
自分勝手な願い事、口に出せる筈もなく。ただ胸の奥へとしまい込む。
あたしでは敵わない。
あたしの願いは叶わない。

9 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:15:25.02 ID:iboNTy2Wo

半盛りのそうめんを前に、ため息をつく。
食欲が全くない。完全に夏バテだ。
向かいの席では足柄が、カツをモリモリ食べていた。

足柄「カツ食べなさい。カツ。ほら、あげるから」ヒョイ

天津風「いらないわよ。おそうめんあるもの」モドシ

足柄「そんなんじゃ足りないでしょ。カツ食べなさい。カツ」

天津風「ゴリラじゃないんだから、そんなに食べられないわよ」

足柄「誰が長門よ」

天津風「知らないわよ」

足柄「いいから食べなさい。ほら、カツよ」ヒョイ

天津風「だからいらないから」ビシッ!

足柄「何でそんなに嫌がるのよ」

天津風「繊細なのよあたしは!誰かさんと違ってね!」

足柄「長門ならいないわよ」

天津風「長門さん違うから」
10 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:16:13.81 ID:iboNTy2Wo
こうして悪態をついてはみるが。
実のところあたしは、彼女の事を心の底から尊敬してる。

メンタル、フィジカル、テクニック。マナー、モラル、エチケット。
戦場からサロンまで。艤装からカクテルまで。
戦闘も戦術も。化粧も社交も何もかも。
惜しげもなく教えてもらった知識の数は、数え挙げれば切りがない。

言い切ってしまえばあたしは、憧れているのだ。
彼女のようになりたいと。

足柄「ほら、これあげるから」ドサ

天津風「いらないから。これ、ノウ、サンキュー、デス」ペシッ

足柄「何よ、欲張りね。仕方ないわね、特別よ」ドササ

天津風「違うから。大きいのが欲しいんじゃないから」ペシシッ

足柄「あ、ゴメンね。こっちだったか」ドバー

天津風「そうじゃなくて!ソースじゃなくてね!」

11 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:17:14.27 ID:iboNTy2Wo
柔らかく伸びた髪と、端正な顔立ち。
透き通った肌に洗練されたプロポーション。
性格は明るく常に前向き。社交的で人望も厚い。
優れた技術と強靭な精神力。餓狼と称されるスタイルは勇猛にしてまた果敢。
豊富な知識と経験を生かし、後進の教育もそつなくこなす。

足柄「なに難しい顔してんのよ。カツ食べなさい。ほら」ヒョイ

天津風「いらないわよ。お腹空いてるんじゃないから」ペシ

足柄「美味しいのよ?」

天津風「知ってるわよ」

足柄「たくさんあるわよ?」

天津風「見れば分かるわ」

足柄「勝利のカツよ!」

天津風「ああ、もう!うっさい!」ムキーッ!

12 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:18:02.57 ID:iboNTy2Wo
あたしがもしも男なら、何があっても彼女を選ぶ。誰を措いても彼女を選ぶ。
多分彼女が本気を出せば、倒せない敵はいないだろう。
多分彼女が本気を出せば、落とせない男はいないだろう。

強く優しく美しく。完成された大人の魅力。
あのひとはきっと彼女を選ぶ。誰もがきっと彼女を選ぶ。

到底あたしでは敵わない。
あたしの願いは叶わない。

足柄「カツ食べなさい。美味しいわよ、ほらほら」

天津風「いらないから。もう、そうめんに乗せないでよ」

足柄「天ざるとかあるじゃない?」

天津風「カツそうめんなんてないでしょ!」

足柄「でも、カツがなかったら、ただのそうめんよ」

天津風「いいの!それで全然いいの!」

足柄「私なんてカツ丼にもカツ乗せるわよ」

天津風「姉さんだけだから!あたし違うから!」

足柄「美味しいのに…」

天津風「そんなに食べなくても毎日カツじゃない」

足柄「そんな事ないわ。昨日はカレーだったし、その前はサンドイッチよ」

天津風「カツは?」

足柄「両方入っているわよ」フフン

天津風「意味ないじゃない!」ウガーッ!

13 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:18:59.22 ID:iboNTy2Wo
戦士としても女としても、彼女には遠く及ばない。
それでもいつかいつの日か、立ち向かわなければならない時が来る。

敵う筈もないけれど、及ぶ筈もないけれど。
あたしがあたしである為に、あたしがあたしを赦せる為に。

あたしの全部で戦って、あたしの全部が負けたって。
あたしはきっと胸張って、あたしの全部を誇るだろう。

足柄「あー美味し。あー美味し」ヒョイパク ヒョイパク

天津風「真夏によくそんなもの食べられるわね」

足柄「あら?暑い夏こそ揚げ物よ。油断大敵って言うじゃない」

天津風「それ使い方違うから」

足柄「でも、こんなに美味しいとビールでも欲しくなるわね」

天津風「ちょっと」

足柄「小瓶なら大丈夫かしら?」

天津風「妙高姉さんに言いつけるわよ」

足柄「私、まだ死にたくないなー」アハハ

天津風「まったく…仕事中に何言ってんのよ」

足柄「そうね。飲む事じゃなくて、今は食べるのが仕事だわ」

天津風「む」

足柄「ガソリンがなきゃ、車だって動かない」

天津風「う、分かってるわよ、食べるわよ!」

足柄「はい、じゃあこれ。カツ」ヒョヒョーイ

天津風「お約束いいから!おそうめん食べるから」ビシバシッ!

足柄「そう?つまんないの」ヒリヒリ

天津風「まったくもう…」ズズズー

天津風「 」

足柄「?」ドシタ?

天津風「麦茶だ!これ!」ダンッ!

天津風被弾(二年連続二回目。今シーズン初)
14 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:21:02.48 ID:iboNTy2Wo

【 時津風 】
いつも同じ所ばかり撫でるせいで、最近時津風の毛並みが悪い。
本人達は気付いてないが、ぶっちゃけそこだけ少しハゲてきてる。

初風「時津風どうしたの?」

陽炎「泣き疲れて寝ちゃったわ」

不知火「毛が生え揃うまで、ナデナデは禁止らしいです」

黒潮「そら、しゃーないな」

初風「ふ、ふーん」
15 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:22:04.52 ID:iboNTy2Wo

◇◇◇
初風「提督」

提督「やあ、初風。時津風の様子はどうかな」

初風「もう落ち着いたみたい。でも少しションボリしているわ」

提督「そうか…代わりに何かしてあげないとな」

初風「…ねえ、提督」

提督「ん?」

初風「私は、サラサラよ」

提督「は?」

初風「だから、私は大丈夫なの」

提督「う、うん?」

初風「だからっ!その…私も今回は頑張ったの!」

提督「……ああ!ああ、そうだな、初風もそうだよな」

初風「あの…だから」

提督「うん、お疲れ様。よく頑張ってくれたね初風」ナデナデ

初風「あ… ///」

提督「いつもありがとう」ヨシヨシ

初風「…ん ///」ウットリ
不知火「司令、失礼します」ドアガチャバタン!

初風「何、勝手に触ってんのよ!この馬鹿っ!」ドゲシッ!

提督「ぐはあッ!?」ズサーッ!

初風「今度やったら妙高姉さんに言いつけるわよ!」ツカツカツカ

初風「じゃあね!失礼するわ!」ドアガチャバタンッ!

16 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:23:33.68 ID:iboNTy2Wo
不知火「司令!大丈夫ですか?」

司令「う、うん。いつもの事だからね」

不知火「申し訳ありません。後で不知火がキツく叱っておきます」

司令「いや、いいんだ。大丈夫だよ」

不知火「ですが…」

司令「本当に平気だから。それより随分慌てて来たようだけど、どうしたのかな?」

不知火「それは──!いえ、急用という程の事でもないのですが…」シドロ

司令「うん」

不知火「不知火は、その…」モドロ

司令「うん、不知火は?」

不知火「不知火は、あの、フサフサです!」

司令「ふさ?」

不知火「はい、ですから問題はありません」

司令「は、はは……」

不知火「ですから、その…」

司令(姉妹だなあ……)

不知火「…司令?」

司令「いや、うん。不知火も今回よく働いてくれたよね?」

不知火「──!は、はい!不知火も頑張りました!」

司令「ありがとう。不知火のおかげだよ」ナデナデ

不知火「あ、司令… ///」

司令(今日は忙しくなりそうかな…)ナデナデ

不知火「…… ///」ヌイヌイ
天津風「天津風よ、失礼するわ」ドアガチャバタン!

不知火「不知火を怒らせたわね!」ズバシッイ!

司令「ぐほおッ!?」ドサーッ!

不知火「次、同じ事をしたら、徹底的に追い詰めますから」ツカツカツカ

不知火「それでは!失礼します」ドアガチャバタンッ!

17 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:24:39.89 ID:iboNTy2Wo
天津風「ああ、酷い…こんなに腫れて」

提督「いてて…いや、大丈夫だよ」

天津風「待ってて、いま救急箱を持ってくるから」

提督「平気さ、頑丈なのだけが取り柄なんだ」ハハ

天津風「無理はしないで…あなたに何かあったらあたし…」

提督「ありがとう天津風、心配しなくていいよ。ところで今日はどうしたのかな?」

天津風「あ、うん。あのね…」

提督「うん、何かな?」

天津風「あの…実は、あたしの髪ね───」
18 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:25:43.21 ID:iboNTy2Wo

【 浦風 】
確かにその髪型は可憐だし、またとても似合っているとは思うけど。
いかんせん手間と時間が多分に掛る。
特別に朝が強い訳でもないし、どちらかといえばガサツなタイプ。
それにも構わずいつものように、寝起きの度に髪を結い、湯浴みの度にまた髪を編む。

果たして今日も浦風は、自慢の青髪さらりと揺らし、足取り軽く駆けていく。
焼き菓子片手に笑顔のままで、敬愛の彼女に会いにいく。

19 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:26:23.06 ID:iboNTy2Wo

◇◇◇
浦風「こんちはー!金剛姉さん。皆さんも」

金剛「HEY!浦風!待っていたヨー」

霧島「こんにちは浦風。今日も元気ね」

浦風「今日はウチの妹らを連れてきたんよ」

磯風「磯風だ。よろしく頼む」

浜風「浜風です。急にお邪魔してすみません」

金剛「No!浦風のsisterならいつでも大歓迎デース」

比叡「紅茶もお菓子もたくさんありますから!」

榛名「ゆっくりしていってくださいね」

金剛「今日は榛名がapple pieを焼いてくれマシタ」

榛名「はい!榛名の自信作です!」

磯風「――美味しい」

浜風「本当にすごく美味しいです」

比叡「榛名は金剛型の名パティシエですから!」

榛名「ありがとうございます」テレテレ

霧島「浦風のクッキーも美味しいわよ」

浦風「あはは、何だか恥ずかしいわー」

20 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:27:27.29 ID:iboNTy2Wo
金剛「二人もお菓子を作ったりしマスか?」

浜風「時々は…でもこんなに上手くはないです」

磯風「お菓子は作った事がないな。だが料理は最近始めてみた」

金剛「Oh!それは素敵ですネー」

磯風「うむ。始めたばかりだが、なかなか楽しいものだ」

霧島「磯風と言えば噂に名高い武勲艦」

霧島「この霧島の計算なら、料理の腕前も相当なものと予測されます」メガネ、クイッ

比叡「ひえー!文武両道ですかー」

磯風「はっはっは。いやそれほどでも」

比叡「そういえば、以前司令が、磯風の料理の話をしてました」

霧島「ほう」

比叡「確か‥記憶に残る料理とか、忘れられない一日になったとか…」

榛名「榛名も聞きました。個性的で衝撃的な味だったって」

榛名「榛名は普通の料理しか作れないから羨ましいです」

霧島「やはりそうでしたか…只者ではないと霧島は最初から見抜いていました」クイッ、クイッ

磯風「はっはっは。いや司令にも困ったものだな」

浦風「磯風」

浜風「磯風」
21 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:28:16.10 ID:iboNTy2Wo
金剛「そんなにgreatなのデスか?私もぜひ食べてみたいデース」

霧島「あの司令を唸らせる腕前ですからね…興味があります」

磯風「いやいや、そんなに持ち上げないでくれ。私などまだまだ若輩の身で」

霧島「この謙虚さ…!それでいて漂う余裕、溢れる自信。流石は武勲艦の風格という奴かな」メガネ、キラーン

浦風「霧島」

浜風「霧島」

磯風「ふむ。そこまで言ってもらえるなら、どうだろうか?私で良ければ、何か手料理でも」

浦風「磯風」

浜風「磯風」

比叡「いいんですか!」

榛名「それでは、今度皆さんでパーティでもしませんか?」

金剛「Yes!それはgood ideaデース!」

霧島「楽しいパーティになりそうですね」メガネ、キラキラー

22 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:29:18.89 ID:iboNTy2Wo
浜風「何なのこの霧島さん。マゾなの?死にたがりなの?」ヒソヒソ

浦風「違うんじゃ、姉さんは天才じゃけどお馬鹿なんじゃ。分かり易く言うと頭のいいゴリラじゃ」ボソボソ

浜風「それって長門さんじゃないですか」

浦風「姉さんを馬鹿にすんな。それだとただのゴリラじゃろうが」

浜風「えっと、じゃあ…綺麗なゴリラ?」

浦風「それならよし」

浜風「いいんだ」

比叡「なになに?何の話?」

浦風「いえ何も」ニコ

浜風「今日もいい天気ですね」ニコッ

浦風「あとキレると手がつけられん」ボソボソ

浜風「優しそうに見えますけど」ヒソヒソ

浦風「大口径の主砲があるのに、素手で敵艦ブン殴って沈めるのはあの二人ぐらいじゃ」

浜風「ゴリラどころかゴジラじゃないですか!そんなの大和さんでもしませんよ!?」

霧島「どうかしましたか?」

浦風「いえ何も」ニココッ

浜風「素敵なメガネですね」ニコニコーッ

23 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:30:11.49 ID:iboNTy2Wo
霧島「スケジュールについてはこの霧島にお任せを。大淀と相談して調整します」メガネ、キラッ

浦風「霧島」

浜風「霧島」

比叡「場所はどうしましょうか」

霧島「海辺のデッキはどうでしょう。涼しくて雰囲気も最高です」キラッキラッ

金剛「それはgood choiceネー」

浜風「待って下さい」

霧島「何か問題でも?」

浜風「いえ、私達(ほぼ磯風)はまだまだ未熟で…!」

浦風「そうじゃそうじゃ、ウチら(9割方磯風)が人様に料理なんて、とてもとても」

比叡「またまたー。ご謙遜をー」

霧島「実力は確かな筈ですが…乗り気でないという事ですか?」

浦風「い、いや、そんな事は全然ないで!なあ浜風?」

浜風「は、はいっ!浜風は全然大丈夫です」(磯風とは言ってない)

磯風「私も大丈夫だ。ノリノリと言ってもいい」

浦風「磯風」

浜風「磯風」

24 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:31:18.29 ID:iboNTy2Wo
榛名「あ…あの、もしかしてご迷惑なのでは…」ウルッ

金剛「そうなのデスか?」シュン

浦風「いやいやいや!そんな事は決して!断じて!なあ浜風?」

浜風「は、はい!迷惑だなんてそんな」

磯風「うむ。気にしないで欲しい。むしろ待ちかねている」

浦風「磯風」

浜風「磯風」

比叡「でも…もしホントに嫌だったら我慢しなくていいよ」ションボリ

霧島「ええ、無理をする必要はありません」ショボーン

浦風「い、いや!そんな事は全然、全く、これっぽっちも!なあっ浜風?」

浜風「は、はいっ!もちろんですっ!大歓迎ですよ、ねっ!磯風?」

磯風「その通り。この磯風が責任を持って、手厚い歓待を約束しよう」

比叡「本当ですか!うわー良かったぁ!」

榛名「榛名、感激です!今からウキウキが止まりません♪」

霧島「信じていましたよ、あなた達」ニッコリ

金剛「それじゃ磯風、メインディッシュは頼みましたネー!」

磯風「任せてくれ。はっはっは、腕が鳴るなー」

浦風「」

浜風「」
25 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:32:09.71 ID:iboNTy2Wo

◇◇◇
お土産持った帰り道。浦風だけが浮かぬ顔。
浦風(はあ…大変な事になってしもうた。やっぱ連れてくるんじゃなかったかのう…)
浜風「──みんな綺麗で優しくて、いい人ばかりでしたね」

磯風「うむ。それでいて強さも兼ね備えている。理想的な女性像だな」

浜風「なんだか憧れてしまいます」

磯風「ああ、全くだ」

浦風「……」

浦風「…まあ、ええか」

浜風「どうしたんですか、浦風?」

磯風「何ボーッとしているんだ。早く帰ってパーティーのメニューを考えるぞ」

浦風「やかましいわ!お前は今から、ウチと料理の特訓じゃ!徹底的に仕込んじゃるけぇ覚悟しとれよ!」
26 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:33:51.66 ID:iboNTy2Wo

【 磯風 】
鬼神の如き武勲艦だと知ってはいるが。
それがどうにも目の前の姿と重ならない。
オムライスを頬張りポロポロと米粒をこぼす様は、殊更に幼く見えた。

陽炎型 八番艦 駆逐艦“ 雪風 ”

泣く子も黙る鎮守府屈指の駆逐艦。
じっとみつめるこちらに対し、首を傾げ視線を返す。
その澄んだ眼差しが、幼さにまた拍車を掛ける。
磯風「何でもないよ、お姉ちゃん」
どこか小馬鹿にしたような物言いに、言ってしまって後悔するが。
当の本人は気にもせず、頭を撫でられ にへら と笑う。
雪風「はい、雪風はお姉ちゃんです!」

磯風「じゃあこれも全部食べような」

雪風「う」

磯風「お姉ちゃんだもんな」
皿の端に除けられた、付け合わせのピーマンを指し示す。
自分の皿と磯風の笑顔を交互に見つめ、雪風は力なく俯いた。
雪風「…これは苦いのです」アウー

磯風「知ってるよ」ニコ

雪風「違うのです!これは磯風が知っているより苦いのです!」

磯風「そうなのか?」

雪風「ウソだと思うなら食べてみてください!」

磯風「大丈夫。磯風はお姉ちゃんを信じてるよ」

雪風「はう」
とりとめのない会話。他愛のないおしゃべり。周りのテーブルがそうであるように。
遅い昼食をとる姉妹の席にもまた、穏やかな風が吹いていた。

27 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:34:47.13 ID:iboNTy2Wo
「きゃあああぁぁーーッ!!ゴキブリーーーッッ!!?」

「!?」「!?」「!?」

緩やかに流れる食堂の午後を、誰かの悲鳴が切り裂いた。
耳に障る忌まわしき名称に、思考と身体が数瞬凍る。
大絶叫に呼応して、そこに居る者ほとんどが、反射的に席を立った。

姿かたちは見えないが、確実に在る気配。
悲鳴に悲鳴が重なって、世界はちょっとした地獄になった。

見たくない。触れたくない。ネガティブな感情が渦を巻く。
ひときわ大きな悲鳴に押され、振り返った視界の隅に、黒い影が舞っていた。
絶望の光景に息を呑む。痺れる脳裏に真実をひとつ思い出す。
『 – G-SHOCK - 奴らは、空を、駆ける 』
高速で飛びこちらへ向かう黒い悪魔。
完全に不意を突かれ、目で追う事すらままならない。

(顔ッ!顔にッ、当たるッ!?間に合わない───ッ!!)

視界と意識が黒に染まった。
28 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:35:36.60 ID:iboNTy2Wo

数秒のブラックアウト。
きつく閉じた両目を薄く開くと、雪風の小さな手があった。

潰さぬように。逃がさぬように。
指で組まれた檻の中には、囚われの虫の姿があった。
雪風「…カナブンです」
雪風の声で我に返る。
響く歓声。大きな安堵。
目の前では雪風が、感謝と称賛を浴びていた。

そのまま窓際に歩み外に放つと、カナブンは遠く空に消えていった。
小さな勇者の活躍で、昼下がりはまた平穏を取り戻す。
磯風「雪風…おまえ、素手で」

雪風「あ、はい。ちゃんと手を洗います」

磯風「あの…雪風」

雪風「はい!雪風はお姉ちゃんですから!」
いつもと変わらぬ笑顔を見せて、雪風はニコリと笑ってみせた。
そのまま食べ終えた食器を持って、お先に、と小走りに駆けていく。

何も言えず、何も出来ずに磯風は、消えゆく背中をただ黙って見るだけだった。

29 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:36:30.88 ID:iboNTy2Wo
ぺたり、と。
席に戻った磯風は力なく腰をおろす。

自分は何だ…。
虫一匹に無様に怯え、挙句の果てに危機を前に目を瞑るなど。
馬鹿か。屑か。

汚れたら、拭けばいい。洗えばいい。子供でも分かる理屈だ。
そんな簡単な事が、この自分には何故出来ない。
ヨーイ、ドン!の声がなければ、戦う事すら出来ぬのか。

呆然と空を仰ぐ。……自分は、いったい何なのだ。

ふと、自分の皿に目を遣れば、先程のピーマンが端に静かに座ってた。
磯風「はっ…は、ははっ…」
意識せず、乾いた笑いが衝いて出た。
あの状況で。あの混乱の中で、雪風は。
その時 私は、何をしていた?木偶のように突っ立って、震える以外の何をした?

フォークで刺したピーマンを、口の中に放り込む。
(敵わないな……)
自虐と共に噛んだ緑は、思いのほか苦かった。

30 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:37:30.13 ID:iboNTy2Wo
やり直そう。全部。最初から全部、何もかも。
今のままでは足りない。今のままでは駄目だ。
訓練の密度も量も二倍にしよう。神通にも指導を乞おう。

やれない事は、今知った。やるべき事は、もう知っている。
汚れたら洗えばいい。届かなければ伸びればいい。

食べかけのパスタを乱暴にかきこみ、冷たい水で流し込む。
口を拭い、食器を持って席を立つ。
先に行った雪風を追うために。
(……今は、まだ!)
磯風は、前を、向いた。

31 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:38:03.75 ID:iboNTy2Wo

◇◇◇
後日。
陸奥「最近磯風凄いわね」

長門「ああ、元々才能はズバ抜けているからな。努力を覚えれば、もう手がつけられん」

陸奥「何かあったのかしら?」

長門「きっかけか?いや、それは分からんが…」

雪風「長門さん!おやつがもうなくなりました!」タッタッタ

長門「おお、そうか。戸棚にみたらしがあるから食べるといい」

雪風「はーい」ニコー

時津風「ずるいよ、ずるいよ!雪風ばっかり!」タタターッ

雪風「雪風はお姉ちゃんなのです!」キシャーッ!

時津風「わたしもお団子食べるー!食べるー!」キャンキャン

陸奥「はいはい、時津風の分もちゃんとあるから」

長門「喧嘩せずに食べるんだぞ」

雪風「はーい」ニコー

時津風「わーい」ニコー
32 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:40:17.61 ID:iboNTy2Wo

【 浜風 】
行儀よく並べられた貯金箱。二匹の仔豚を神妙な顔で割っていた。
一年間必死で貯めた小遣いを、首からさげた財布に詰める。
パンパンに膨らんだガマ口には、夢と希望が詰まってる。
待ちに待ち、焦がれに焦がれた今日の日は、二人にとっての聖戦らしい。
雪風「雪風の本気を見るのですっ!!」

時津風「時津風は負けないよっ!!」

◆◇◆今日は楽しい夏祭り◆◇◆

初風「あー、うるさい」

天津風「昨日からずっとあの調子よ」
33 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:41:25.48 ID:iboNTy2Wo

今年の夏祭りには大物のスターが来るらしい。
せっかくだからと色紙を持って会場に行ったら、おめかしした那珂ちゃんがいた。眩暈がした。
バックダンサーに舞風と野分までいた。もう言葉にならない。

ミンナアリガトー! ナカチャンダヨー! ダイスキダヨー!
歓声は終始途切れる事がなく、興奮と熱狂が会場の隅々にまで行き渡る。
初めはどうなる事かと思ったが、結果から言えばライブは大成功だった。

とにかく那珂ちゃんが最高だった。本当に素晴らしかった。
ステージ狭しと駆け回り、歌い、踊るその姿は、まさしくアイドルそのものだった。
舞風のダンスも見事だったし、フリフリ衣装の野分を見た時には、思わず変な声が出た。
いつもよりずっとずっと輝いて見えたのは、きっと立派な照明だけのせいじゃない。

夢のようなひととき。繰り返されたアンコール。
最後の曲が終わっても、大きな拍手と歓声はいつまでも続いていた。
◇◇◇
帰り際、楽屋をチラリと覗いてみると、ちょうど那珂ちゃん達がいた。
声を掛けようと思ったが、スタッフと談笑しているのを見て、今回は遠慮する事にした。
感想はまた後日にしよう。
34 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:42:19.02 ID:iboNTy2Wo

◇◇◇
大盛況のライブが終わり、観衆は大通りへと流れゆく。
那珂ちゃんのライブも良かったけれど、雪風達にとってはここからが本番だろう。

幅広く真っ直ぐに伸びたその道の、両側にひしめき並ぶ屋台の灯り。
ただ眺めゆくだけで、こんなにも心が躍る。
幼い彼女らのスイッチが入るのも致し方ない所か。姉なのだが。しかも二人も。
秋雲「そんなわけで~、そろそろ秋雲さんは行ってきま~す!」

陽炎「はいはい、はしゃぎ過ぎないのよ」

谷風「およ?秋雲はドコに行くんでい?」

黒潮「屋台は夕雲型の娘らと周るんやて」

浜風「秋雲は友達が多いですね」

磯風「まあ、あの性格だからな」

浦風「鎮守府の外にも顔が広いしのぉ」

谷風「おっ!?何だよおいおい!粋な出店があんじゃねーか!」
谷風が屋台に飛び込んで、水風船をいきなり三個も買ってきた。
全開の笑顔で振り回し、これで勝つると極めてうるさい。
35 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:42:48.07 ID:iboNTy2Wo
磯風「しかしすごい規模だな」

浦風「人も屋台も去年より全然多いのぉ」

浜風「それでは、はぐれないように気をつけて行きましょう」
一秒、目を離したその隙に、雪風と時津風は迷子になった。
どれだけ万全の準備をしても、あの二人は常に、その上をいく。
やるせなさ満載で空を見上げる。星が綺麗だった。
陽炎「子供じゃないんだから大丈夫よ」

黒潮「浜風は心配性やなー」

陽炎「今日くらいは、何も考えずに楽しみなさい」
そう言ってニッコリ笑う陽炎の後ろでは、谷風が四つ目の水風船を買っていた。
最初からアクセル全開。谷風はいつもそうだ。
彼女のエンジンには、フリーダムというニトロが積んである。
谷風「ボヤボヤしてると置いてくぜえっ!」
強引に引っ張られ、ようやく一歩前に出る。出足が鈍いのは相変わらずだ。
難しく考える事はない。今日を楽しめばそれでいいのだ。
彼女の笑顔が証明してる。私もようやくエンジンに火を入れた。
36 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:43:32.65 ID:iboNTy2Wo
チョコバナナとイカ焼きを買ってみた。
メチャクチャな組み合わせだが、不思議と相性は悪くない。

歩きながら食べるのは行儀が悪いし、チョコやソースで汚れるのも上品とはいえない。
けれども今日はそれでいい。今日はそれが正解なのだ。
お祭りの作法に従って、ペロリと指のソースを舐めた。
今日は特別な夜なのだ。冷たいラムネが嬉しかった。
37 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:44:11.65 ID:iboNTy2Wo
振り返ると谷風が、買ったばかりの水風船を落として全部割っていた。
全く同じ光景を、去年もここで目にした記憶がある。
身長も胸囲も行動も、一年前から一ミリも成長していない。

『変わらないでいる事は、変わっていく事よりも難しい』

以前提督が、寂しそうに語っていた言葉を思い出す。
今こそ彼に伝えたい。おめでとうございます。谷風は今日も元気です。
38 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:44:54.69 ID:iboNTy2Wo
隣を見れば黒潮が一箱目のたこ焼きを食べ終わり、二軒目を果敢に攻めていた。
朝昼と、食事を抜いていたのはこのせいか。子供よりも動きがいい。
大人なのに。お姉さんなのに。女の子なのに。
黒潮「ふっふーん。逃さへんで!」
39 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:45:30.15 ID:iboNTy2Wo
浦風は屋台の人と楽しげに話してる。
お互い威勢が良いせいか、妙に馬が合うよだ。
冷やし飴はないんか?と、大きな声で喋ってた。
懐かしいけど、そんなマイナーなのある訳ないよ。
浦風「あったでー!」

浜風「あるんだ!?」
今年の屋台はレベルが高い。
40 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:46:09.24 ID:iboNTy2Wo
谷風がまた水風船を買っている。何度でも蘇るさ、とやたらうるさい。
割った分を買い直し、更に上乗せで色違いを買っている。
これには屋台のオヤジも苦笑い。無駄遣いのレベルが違う。
ひとつおまけしてもらい、情熱的に吠えていた。
谷風「こいつは粋な計らいだね!」
41 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:47:04.59 ID:iboNTy2Wo
陽炎はかき氷を買っていた。
食べ物ではあまり冒険をしないタイプ。
屋台でもやはり定番がお好みのようだ。
オヤジ「らっしゃい」

陽炎「ひとつ下さい」

オヤジ「あいよ。シロップは、イチゴかな?」

陽炎「レインボーで」

オヤジ「嬢ちゃん、通だねえ!」
浜風「レインボーって何だろう…?」
42 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:48:10.64 ID:iboNTy2Wo
磯風が両手にクレープを買ってきた。イチゴとバナナで迷ったようだ。
余計なバルジがつくからと、普段はおやつもあまり食べないのだが。
両方買うとは意外だった。今夜はやはり特別らしい。
磯風「たまにはいいだろう」
そう言って笑う横顔は、いつもよりずっと可愛らしかった。

一口ずつ貰ってみたが、どちらも甲乙つけ難かった。
どうやら両方買うのが正解だったようだ。
43 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:48:41.92 ID:iboNTy2Wo
谷風がビニール袋いっぱいに、スーパーボールを持ってきた。
あんず飴を舐めながら、たくさん取れたと上機嫌。
好きなのあげると言われたが、正直ひとつも欲しくない。
部屋に帰れば同じのが、100個くらいはある筈だ。
どうしてこの江戸っ子は、毎年同じ行動をするのだろうか。
谷風「よっしゃあ!これで勝つる!」
44 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:49:42.91 ID:iboNTy2Wo

祭りの熱気に当てられて、財布の紐も自然と緩む。
安物の景品は、子供だましの言葉通りに、甘く優しい嘘をつく。
眩し過ぎる電球と、香ばしいソースの香り。
喧噪は途切れる事もなく、雑多な全てが混ざり合う。

お囃子の交じる夜の風が、涼しげに頬を撫ぜた。
今日という日が心地よかった。
45 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:50:32.05 ID:iboNTy2Wo

磯風「さて、そろそろ探してくるか」

浦風「ほうじゃの、ええ時間じゃ」

浜風「大丈夫ですか?」
賑やかな祭りの最中、人波が途切れる事はない。
前にも後ろにも隙間なく。遥か先まで延々続く。
磯風「なに、一番騒がしい所に行けばいい。あいつらのいる所が大抵そうだ」

浦風「見つけるのはみやすいけど、捕まえるのはたいぎそうじゃのぉ」
磯風は白手袋を嵌め直し、浦風は首に手を当て、音を鳴らす。
困った困ったと言いながら、全く困ってなさそうだ。
磯風「それじゃあ、行ってくる」

浦風「すぐ戻るわ」
そう言って前に進むと、二人は音もなく波に溶けた。
46 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:51:32.25 ID:iboNTy2Wo
黒潮「今日イチの出来やわ。あのおばちゃん只者ちゃうわ」
気が付けば黒潮が、またたこ焼きを食べている。
温厚な常識人の彼女だが、趣味嗜好に関しては一部極端な所がある。
何がそんなに黒潮を駆り立てるのか。ソースに麻薬でも入ってるのか。

毎日毎日カツばかり食べる足柄に通じるものがある。
黒潮も相当だが、足柄もまた大概だ。一種の病気と言ってもいい。

あれだけは理解出来ないと、以前天津風も苦笑していた。
彼女達の未来の旦那様方は、きっと少しだけ大変だ。
47 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:52:23.43 ID:iboNTy2Wo
───天津風といえば。

何か用事があるとかで、今回は別行動をする事になった。初風もそうだ。
二人ともあまり人混みを好むタイプではないし、それも関係しているのだろうか。
浜風「何かあったのでしょうか」

陽炎「全然平気。何にも心配しなくていいわ」

黒潮「せやで。馬に蹴られたないやろ?」

浜風「うま?」

陽炎「まあ今日が決戦の日なのは、何も雪風や谷風に限った話じゃないって事」

黒潮「先駆け、抜け駆け、一騎駆け。あちらの戦も華やかやなー」
そういえば不知火の姿もない。
迷子の心配はないだろうが、体調でも悪いのだろうか。
陽炎「別に病気じゃないから大丈夫よ」

陽炎「あ、でも病ではあるか」

黒潮「せやけど医者でも治せんしなー」
全てを見透かしたような顔をして、陽炎が愉快に笑う。
陽炎「はてさて、誰が勝鬨を上げるやら」
ぴーひゃら♪と、お囃子が呑気に鳴っていた。
48 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:53:22.10 ID:iboNTy2Wo

◇◇◇
磯風「電池切れだ」

浦風「寝てしもーたわ」
程なく戻った二人の背には、天使が安らかに眠ってた。
充実しきった寝顔から、達成感が見て取れる。
二人の一年戦争は、完全勝利 S で終わったらしい。
浜風「やれやれ。家に帰るまでが夏祭りですよ」
柔らかな頬をつついてみると、えう、と小さく寝言が漏れた。
陽炎「それじゃあ、そろそろ戻りましょうか」

黒潮「せやな、お土産買うて帰ろうかー」

浜風「たこ焼きはもういりません」

黒潮「んー?よー聞こえへんわー」

谷風「よっしゃ!それじゃ、この谷風さんに任しときな!」

浜風「水風船も!結構です!!」

磯風「最後まで騒がしいな」

浦風「いつも通りじゃの」
また来年と、屋台通りを後にする。
財布は空になったけど、代わりに思い出が手に入る。

谷風の水風船は、結局八個にまで増えていた。去年よりも二個多い。
成長と見るか、退化と見るか。専門家の間でも意見が分かれる所だ。

49 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:54:17.09 ID:iboNTy2Wo

◇◇◇
後日。
浜風「お疲れ様でした」

那珂「ありがとー、来てくれたんだ」

浜風「二人も頑張ってましたね」

舞風「ありがと~、ステージから見えてたよ!」

浜風「ホントですか」

野分「野分は舞い上がって全然でした」

浜風「でも、可愛かったですよ」

野分「も、もう、やりません ///」

那珂「えー、のわっち勿体ないよ、次もやろうよー」

野分「のわっち言わないで下さい ///」

舞風「でも気持ちよかったでしょー」

野分「う…それは、まあ、ハイ ///」

浜風「でも、本当に素敵でした」

那珂「ありがとー。次もまた頑張るよー!」

舞風「実はね、次の予定も決まってるんだ」

野分「今回好評だったらしく、別の所から招待されたんです」

浜風「え、すごいじゃないですか?」

那珂「もっと素敵になっちゃった!きゃは♪」

舞風「次は、どんなステップで踊る? んー、どうしよっか?」

野分「評価されるのは嬉しいものですね」
50 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:54:51.01 ID:iboNTy2Wo
那珂「いやー、でも浜風ちゃんも大変だったみたいだねー」

浜風「はい。──え?」

那珂「雪風ちゃんから聞いたよ!迷子になったんだってね」

浜風「」

舞風「まさか浜風が泣くなんてね、意外だったよー」

野分「こら、舞風!…でも確かにすごい人出だったみたいだし、仕方ありませんね」

那珂「時津風ちゃんが助けに来てくれたんだってね。偉いね~」

舞風「意外としっかりしてるんだよね、二人とも」

野分「ああ見えて姉ですから。見直しました」

浜風「」
51 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:55:40.17 ID:iboNTy2Wo
那珂「あ!そういえばこれ、主催者さんから差し入れで貰ったんだ」

舞風「お菓子だよ~、たくさんあるからみんなで分けてね」

野分「当分おやつには困りませんね」

浜風「あ、ありがとうございます」

那珂「それじゃ、次のライブの打ち合わせがあるから、またね~」

舞風「さあ、次も元気に頑張りまっしょーう!」

野分「浜風、今日はわざわざありがとう。それではまた夜に」バイバイ
52 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:56:23.70 ID:iboNTy2Wo

◇◇◇
浜風「……」トコトコ

雪風「何だか甘い匂いがするよっ!?」ヒョコッ

時津風「キャンディなの?キャンディなの?」チョーダイ チョーダイ

浜風「……二人とも、ちょうどいい所に」ガシ

雪風「う?」

時津風「はう?」

浜風「……舞風から聞きました」ニコ

雪風「」

時津風「」

浜風「ちょっと、ゆっくりとお話をしましょうか」ニコ

雪風「ゆ、雪風知らないよ?雪風は悪くないよ!」

時津風「わた、わたしも違うよ!時津風じゃないよ!」

浜風「さあ、行きましょう」ニッコリ

雪風「」

時津風「」
53 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:58:03.62 ID:iboNTy2Wo

【 谷風 】
祭りの屋台で散財し、夏なのに懐は秋の風。
宵越しの銭は持たねぇと、江戸っ子は強がってみせるが本当は間宮が少し恋しい。
今日も砂糖水にジャムを溶かし、氷を浮かべてひとり飲む。

磯風「アイスがなければ」つ 製氷機

浜風「かき氷を食べればいいじゃない」つ かき氷機

谷風「!?」

野分「こんにちは。マリー・アントワネットです」シャカシャカ

舞風「さあ、そのイチゴシロップをここに」シャカシャカ

浦風「明石姉さんと夕張姉さんに造ってもろうたんじゃ」シャカシャカ

秋雲「食べ放題だよー!」ドッサリ

谷風「!!」パアアァァ!

54 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 12:59:15.94 ID:iboNTy2Wo

【 野分 】
顔に畳の跡をつけたまま、午後の執務室にやってきた。

頬や額に見事な刻印。意外と寝相が悪いのか?
愉快な模様とあいまって、澄まし顔がやたらと可愛い。

しかしクールでしっかり者の野分が、こんな凡ミスをするなんて。
かなりレア、というか初めてか?よく見れば後ろにも寝癖が少し。
夏の和室でのお昼寝は、さぞかし快適であったようだ。

さて、この生真面目な秘書艦に何を言おうか、何をしようか。
司令は悪戯っぽく、少し笑った
55 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 13:00:08.03 ID:iboNTy2Wo

野分「さあ司令。午後からも頑張りましょう」

司令「うん。でもその前に野分、ちょっと写真を撮ろう」

野分「は?」

司令「記念にね」

野分「え、野分をですか」

司令「うん」

野分「それは構いませんが…でも何でですか?」

司令「野分が可愛いからかなー」

野分「か、可愛っ…!何ですかいきなり ///」

司令「いつも可愛いけど今日はまた一段とね」ニコッ

野分「は、え、はあー? ///」

司令「そういえばこうやって写真を撮るのは初めてだね」

野分「り、理由になってません ///」

司令「たくさん撮っちゃうよー」

野分「嫌です、そんな事を言われると何だか恥ずかしいです ///」

司令「いいからほら、楽にして。すぐに終わるよ」

野分「え、あの司令 ///」ンアー
56 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 13:00:47.91 ID:iboNTy2Wo
◇◇◇
野分「司令、酷いです」プクー

司令「ゴメンゴメン。でも可愛く撮れてるよ」

野分「可愛くないです。こんなのみっともないです」

司令「他の人には見せないから大丈夫」

野分「駄目です、返して下さい」

司令「さ、私室に飾ろうかな」

野分「そんなの駄目です!駄目です ///」

司令「じやあ、今度またちゃんとしたのを撮ろうね」

野分「う…もう、知りませんっ! ///」プイッ
57 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 13:01:36.18 ID:iboNTy2Wo

◇◇◇
野分「///」ポーッ

浦風「どしたんや野分、そんな赤い顔して」

野分「///」ボソボソ

磯風「ふむふむ、先程?」

浜風「執務室で、司令に?」

秋雲「恥ずかしい写真を撮られまし…た?」

浦風「」

磯風「」

浜風「」

秋雲「///」ワーオ

磯風「よし、分かった。殺そう」ジャキンッ!

浦風「ええい離せ浜風!ウチがあの馬鹿シバいちゃるけえ!」ゴルァ!
58 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 13:02:16.03 ID:iboNTy2Wo
秋雲「で、どんな感じ?どんな写真?」

野分「///」テレテレ

舞風「ふむふむ、自分は嫌だと言ったけど?」

谷風「初めてだね、可愛いよ、と司令が?」

秋雲「強引に、何枚も、いろんな角度から…?」

浦風「」

磯風「」

浜風「」

秋雲「提督やるねー ///」

磯風「任せろ。迅速に確実に徹底的に、殺す」ジャカ ジャキンッ!

浦風「じゃけぇ離せゆうとろうが浜風!ウチがタマとったらあぁーッ!」ゴラゴラーッ!

59 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 13:03:29.09 ID:iboNTy2Wo

【 舞風 】
演習で凛々しく戦う他の鎮守府の長門を見て、ウチで甘いものばかり食べている戦艦は偽物なんだと気付く。
が、時々お菓子をくれたり頭をなでてくれるので、舞風はこっちの方が好きだ。
こないだはカステラをくれた。
舞風「見ててね?ほらっ!」クルクル ターンッ!

長門「うむ。舞風は踊りが上手だなぁ」ナデナデ

清霜「長門さん!あたしね、また強くなったよ!」

長門「そうか、清霜は凄いなぁ」ナデナデ

卯月「うーちゃん、長門の絵を描いてきたぴょん!」

長門「それは嬉しいな。ありがとう卯月」ナデナデ
長門「よし、じゃあみんなでおやつを食べよう。今日は間宮の水羊羹だぞー」

舞清卯「やったー」ワーイ

陸奥「大人気ね」

武蔵「全く仕事する気がないな」
60 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 13:04:15.31 ID:iboNTy2Wo

◇◇◇
大和「長門さんは駆逐艦に甘すぎです!」クワッ!

長門「いや、そんなつもりはないぞ」

大和「だらしない顔して甘いものばかり!」ガミガミ

長門「いや、あれは指導の一環でだな…」

大和「そんな事では周りに示しがつきません!」ウガー

長門「」

陸奥「仲がいいわね」

武蔵「喧嘩してるように見えるが」
61 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 13:05:19.84 ID:iboNTy2Wo
大和「演習でも負けてばっかり!そんなだから他の鎮守府から馬鹿にされるんです!」

長門「その分おまえが強いからいいじゃないか」

大和「もう…またそうやって。本気になれば私なんかより強いのに」

長門「…本当の姿など、おまえが知っていればそれでいい」

長門「他の鎮守府などどうでもいい。おまえが分かってくれているなら、周りの声など関係ないさ」

長門「大切なのは」カベドン

大和「え?あの…」ドキ

長門「…おまえだけさ」ササヤキ

大和「///」カー

陸奥「チョロいわね」

武蔵「チョロ過ぎだろ」

62 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 13:06:15.49 ID:iboNTy2Wo

【 秋雲 】
近代的な設備はあれど、無駄遣いする電気代はない。
記録的な猛暑の中、クーラーを止められた部屋で姉達が死んでいた。
音が不快という理由で粉々にされていた風鈴には、実弾を使った形跡がある。怖い。

ガサゴソと音をたて、コンビニの袋から差し入れのアイスをチラ見せしたら動き出した。
公園で袋詰めの豆をボリボリ食べながら、破竹の勢いで鳩に襲われた雪風の気持ちを、少しだけ理解する。
オイテケー オイテケー ダッツオイテケー

オイテケー ワタシパルムー ズルイワタシモー
こんな状況でも、あずきバーは人気がない。

63 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 13:07:09.81 ID:iboNTy2Wo

◇◇◇
陽炎「しかし危ない所だったわね」 ジャイアントコーン

不知火「熱中症寸前でした」 クーリッシュ

黒潮「秋雲のおかげやわ。ありがとうな」 バニラモナカジャンボ

初風「ところで、誰よ風鈴割ったの」 ピノ

雪風「雪風じゃないよ!雪風じゃないよ!」 ガリガリ君

天津風「じゃあ、時津風?」 ハーゲンダッツ

時津風「わたしも違うよ!いい子にしてたよ!」 パピコ

浦風「…」 爽

磯風「おい」 パルム

浜風「はあ…後で説教ですね」 白くま

谷風「まあ、元々拾ってきたモンだからタダなんだけどな」 スーパーカップ

野分「いえ、それでも罪には変わりません。罰則はどうしましょう?」 BLACK

舞風「舞風もう一個アイス食べたーい!」 パナップ

秋雲「はい!判決出ましたー!」 あずきバー

全員「ゴチになりまーす♪」

浦風「な、なんじゃこりゃああぁーーッ!」(迫真)
64 : ◆36RVFTz/1g 2015/07/20(月) 13:08:30.36 ID:iboNTy2Wo
以上です。
読んでくれた人ありがとう。
65 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/20(月) 13:15:07.88 ID:iRYagDJEO
こういうの大好きだ、乙
66 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/20(月) 14:07:37.05 ID:vLWkP7060
乙です
いいねえ

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